万理02 – 興奮の大発見だ万理先生

「え、これ、、、えっ?」

中に小分けにされている、犬の体毛のサンプルをチェックしていた万理が、慌てて書棚から1冊の本を持ってくる。

ジャンヌ博士が最後に残した論文だった。

「まさか、、そんなはず、、、え、いやいや、、、まさかね」

万理は、サンプルの体毛に付着した丸い小さな粒と、論文のイラストや文書を比較して確信した。

「マジで?、、これ、、オテイ虫の卵だわ、、絶滅していなかったんだ、、、」

オテイ虫とは、メス犬の子宮に寄生する寄生虫で、宿主、いわゆる寄生された主であるメス犬には何も害は無いが、その成虫から長寿薬が抽出できるという、人類にとっての夢が詰まった幻の虫だった。

絶滅種とされ100年以上もの間、発見された報告の無いこの寄生虫。

それを目の前にした万理は、興奮と共にいろいろな事が頭の中を駆け巡る。

「こんな全人類にとっての重要な発見、、、、、上に報告したら絶対に奪われるに違いないわね」

得てして、こういった巨額なお金の臭いがする研究は、力のある教授が自分のものにしてしまうのが世の常だった。

「私の尊敬するジェンヌ博士の残してくれたこの研究を、大人達の金稼ぎの道具にされたら、たまったもんじゃないわ」

万理は、研究の成果がある程度出るまでこっそりと研究することを決意した。

「しかし、問題は研究費ね、、、、仕方ないか、、出来るところまで自腹でやるか」

万理は、すぐに実験に取り掛かる。

まず、発見したオテイ虫の卵を慎重に回収し、容器に入れて保管する。

「卵は3個か、失敗は許されないわね、お願い!どれか生きててね」

万理はさっそく卵を孵化させ、あわよくば寄生させるために、実験用に飼っているメス犬の性器付近の体毛の根元に卵を付着させた。

「ごめんねぇ、こんな実験に付き合わせて、もし、寄生されても、あなたの体には害は無いから安心してねぇ」

ジェンヌ博士の論文を何度も読んだ万理は、オテイ虫の生態に熟知していた。

「え、いま、色が変わったような、、、少し大きくなった?、、まさかね」

犬の体毛に付着させた瞬間に卵が変化したような気がした万理は、記録する為に慌ててカメラを取りにデスクに戻る。

カメラを手に取り、犬のゲージに戻ろうとすると、視界に入った卵を付着させた犬が、ブルブルと体を振っていた。

「あーっ!だめぇー!」

慌てて大声を出し、駆け寄った。

何かを付けられたと感じた犬が反射的に跳ね除けようとしたのかもしれない。

時既に遅し、付着させたはずの場所には既になく、辺りを隈なく探してやっと見つけたが、犬に踏まれたのか潰れてしまっていた。

「仕方ない、これは後で中を覗いてみよう、、あと2個か、、きっと、粘着力が弱くなってるのね、、、何か接着剤、、、いや、どんな物質がどんな影響を与えるか、、、少し温めてみるか」

犬の体温に反応して卵に変化があったと仮定した万理は、ランプで犬の体温と同じ環境を再現してみる。

今度はビデオカメラで記録する。

「設定温度38.5度、5分後、変化無し」

万理は、いつも実験の記録を、手書きのメモではなく、ボイスレコーダーに録音していた。

「設定温度38.5度、10分後、変化無し」

「設定温度38.5度、30分後、変化無し」

「設定温度38.5度、60分後、変化無し」

「だめだわ、さっきはあんなにすぐ反応があったのに、、、皮膚から出る二酸化炭素?、、皮脂?、、犬の生態エネルギーの何かを得てるのは確かよね、、、よし、予算無いし、やるか」

万理は、意を決して自分の体毛で実験することにした。

さっきメス犬は性器付近の体毛であったことと、整髪料の影響を考えて自分の陰毛に付着させた。

「ジェンヌ博士、お願い!反応させて!」

万理は、ちょうど排卵してる頃で高温期なので、犬の体温より少し低いくらいだ。

ショーツを中で卵を温めて、孵化する事に挑戦した。

「やだ、なんか卵を温める鳥になった気分、、、、、チュンチュン、チュンチュン、、早く産まれるだチュン、、、、、はぁあ、、万理、あなた、もう27よ」

万理は、鳥のように翼にした手を下ろし、ストップウォッチをスタートさせ、自分の体温を計った。

「設定温度26.9度、5分経過、変化無し、、え?、、少し色に変化あり、白から少し赤みが出る」

オテイコックス
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オテイコックス(オテイ虫、学名:Oteycoccus)とは、1861年にフランスの女性生物学者ジャンヌ・アルヴァ・オテイ(1829年2月11日 – 1861年12月3日)によって発見された直径5~8mm程度の寄生虫である。現在は絶滅種とされており、1862年以降は存在が確認されていない。

概要
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ジャンヌ博士の論文によると、この寄生虫は雌犬の子宮にのみに寄生する。

また、中央アジアの砂漠に住む遊牧民が、古来よりオテイ虫から薬を抽出する技術を持っており、この民族が近隣の民族よりも遥かに寿命が長いのは、この薬の影響が大きいと発表された。

また、それに伴って出生率と性犯罪率が激減することから、長寿の副作用として、生殖本能が減退するという仮説が論文に記されている。

論文と生態
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オテイ虫の生態には諸説あり、栄養を雌の排卵から摂取する説と、雄の精子から摂取する説とがある。精子説は、排卵説に比べ摂取するサイクルが不規則な為に、大方の学者は排卵説を唱える。

また、オテイ虫は、子宮に寄生してから数ヶ月後の産卵期に寄主の体内から外に出て体毛に産卵し、産卵後はそのまま死滅することからも、寄主に危害を与えるような危険な寄生虫ではないとされる。

ジャンヌ博士
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この当時には珍しい女性生物学者のジャンヌ博士は、研究者としての地位を確立するために男装し、男として研究者になったことで知られるが、この論文発表時に突如として女性であること明かす。また、この論文発表の半年後に自宅で薬物自殺をしたことから、謎めいた論文と言われる。

ジャンヌ博士の死後に、現地を視察した研究チームから、すでにこの寄生虫は絶滅していたと発表され、現在に至るまで研究が再開されることもなく、未だに論文の真相は明らかになっていない。

長寿薬は人類にとって永遠のテーマであることから、長寿を得る代わりに子孫繁栄を失うこの薬の事を、まさに人類のトレードオフだと話題にされてきた。現代においても、いくつもの論文で紹介されているが、その多くは悪い意味で引用される。


ウィキフィディア(Wikifictdia)より引用

万理03 - いつも前向き万理先生
万理は自分のショーツの中をカメラで収める。 ガチャ 「八栗先生、今日は大漁ですね、またサンプルが届きましたよぉ」 突然、高橋がまた荷物を届けに来たのだ。 万理は慌ててショーツを閉じ、身なりを整えた。 ...