菜緒02 – 尾崎社長と保坂マネ

「ちょ、ちょっと、待てよ、菜緒、、、お前、彼氏とかはどうなの?、、全然、プライベートで外に出る気配もないけど?」

尾崎の質問にも止まる気配もなく、階段に向かう菜緒。

「私、 別に、男に興味ないし、、、じゃあね、、お疲れさまぁ~!」

菜緒は、そう言って2階の自分の部屋に上がって行った。

「明日も仕事なんだから、、ゲームばっかやってねぇーで、、ちゃんとオナって寝ろよっ!、、、はぁぁ、、まったく」

2階に上がる菜緒を見ながら尾崎がため息を吐く。

尾崎が自宅兼事務所にしているこの一軒家は、バブルの時に購入した尾崎の唯一の財産だった。

その2階の一室を菜緒は寮として使っている。

菜緒が2階に上がっていくのを見送った2人は、目を合わせてやれやれという表情をしてた。

「しかし、あの菜緒のマイペースは、なんとかしねぇとなぁ、、、菜緒が潰れたら、うちは終わるよ」

尾崎が、冷蔵庫から缶ビールを2本取り出して、保坂の元にやってくる。

「菜緒はよぉ、、色気が足りねぇわなぁ、、、あいつ、きっと処女だろ?、、オナニーも全然しねぇーしよぉ、、女はセックスしなきゃ、色気が出ねぇからな」

プシュッ

尾崎が、保坂に缶ビールを1本渡して、自分のビールを開けた。

「俺が胸を大きくした女優が何人いるか知ってるか?」

保坂は、また話しが長くなると、覚悟を決めた。

仕事終わりに、グダグダと話しながら飲むのが、この事務所の定例行事となっていた。

「なんとかするったって、、、俺にどうしろって言うんスか?」

プシュッ

保坂もビールを開けて、軽く尾崎の缶ビールにぶつけた。

「俺が、もうちょい若けりゃーよー、俺の女にして、言うことを聞かせるんだけどなぁ、、、お前ぇ、若けぇんだから、なんとかしろよ」

尾崎は、ビールをグビグビっと飲んでため息をつく。

確かに昔の武勇伝はたくさんある尾崎だか、菜緒とは親子以上、下手をすると孫くらいの歳の差があった。

「そりゃ、なんとかできるもんなら、なんとかしたいっスけど」

保坂のこの言葉は、本心だった。

もちろん、容姿がタイプだからスカウトをした訳で、あのドSの性格さえ、なんとかなれば付き合いたいとさえ思っていた。

しかし、菜緒より身長が低く顔もブサイクだと自覚してる保坂は、客観的に見て自分とは釣り合わないと諦めていた。

「はぁーあ、どうにか、なんねぇーもんかねぇー」

「どうにか、なんないっスかねー」

2人は、揃って頭の後ろで手を組んで天井を見上げた。

「誰か、ポンッと1億円くらい、くれる奴いねぇーか?」

「欲しいっすねー、1億円」

2人の宴は、いつもこうやって過ぎていく。

ピンポーン

玄関からチャイムが響いた。

「お、来たか?1億円」

尾崎が、ムクッと立ち上がり玄関に向かう。

「っなわきゃ、ないでしょ」

保坂は呆れ顔で、テレビの電源を入れた。

「はいはいはいはい、どちらさん?」

尾崎が、玄関とドアを開けると、なにやら縦長の大きな段ボール箱を抱えた、スーツ姿の男が立っていた。

訪問販売のようだが、スーツはテカテカで薄汚い容姿だった。

「あのー、、いま少しお時間よろしいですか?」

スーツの男は、いかにも怪しい物を売っていそうな雰囲気をかもし出している。

「おっ、いいねぇー、あんちゃん、、、いま飲んでっから、上がんないっ」

尾崎が、スリッパを出して手招きをする。

スーツの男は、予想外の展開に呆気にとられている。

「え?、、、いいんですか?」

ニコニコと奥に入っていく尾崎を、スーツの男、段ボール箱を抱えて追いかけるように部屋に入った。

「随分と、重そうなもの売ってんだねぇ、、まぁ、座んない、、ビールでいいかい?」

尾崎は、缶ビールをテーブルに置いて、スーツの男と向かい合う。

芸能事務所のかたわら映画のプロデューサーもしている尾崎にとって、こんな面白そうな男は何かのネタになりそうだと興味を持ったのだ。

テレビを見ている保坂は、またいつも悪い癖だと呆れ顔だった。

「兄ちゃん、、もうこの仕事は長いの?」

尾崎が、スーツの男にビールを勧めながら質問する。

「あ、頂きます、、、え?、あ、いや、実は、ずっと就活してたんですけど、今日この会社に就職が決まって、今朝から飛び込み営業を始めたばっかりです。」

スーツの男は、見るからにダメ男のようだった。

その証拠に仕事中にも関わらず、勧められたビールをなんの抵抗もなく飲みだした。

「へぇ~、で、どうだい、売れてるかい?」

尾崎は、ニヤニヤしながスーツの男を見つめる。

「いえ、それが、今日は朝から、100軒以上も訪問してますが、ちゃんと話しを聞いてくれたのは社長が初めてです。」

あまりにも正直に話すスーツの男に、さすがの尾崎も苦虫をつぶす。

「だろうなぁ、、、で?、、今日は何を売りに来たんだい?」

尾崎はスーツの男に見切りをつけて、商品の方に興味深々の顔で身を乗り出した。

菜緒03 - スーツの男とラブドール
「えっ、、あ、はい、、今日は、ラブドールのご紹介に伺いました」 調子が狂ったスーツの男は、完全に尾崎のペースに乗せられている。 「おっ、いいねぇ、、ラブドール、、愛の人形、、、、っで、保坂よぉ、ラブドールってなんだよ?」 ...